第13章 Workers AI と AI Gateway で“テストを助けるAI”も触ろう 🤖☁️🧪
この章では、Cloudflare の AI 機能を「すごい文章を作る道具」としてではなく、ローカル開発・デバッグ・テストを助ける実用品として使ってみます ✨ 2026年4月15日時点では、Workers AI は Worker から binding 経由で呼べて、AI Gateway はそのリクエストに対して 分析・ログ・キャッシュ・レート制限・リトライ・フォールバック などをまとめて扱える位置づけです。Cloudflare のローカル開発は Worker 本体は手元で動かしつつ、binding ごとに実リソースへつなぐ考え方が整理されています。 (Cloudflare Docs)
この章のゴール 🎯
この章のゴールは、次の4つです 😊
- Worker から Workers AI を呼ぶ流れをつかむ
- AI Gateway をはさんで「見える化」する
- AI をテストケース案づくりや分類のたたき台に使う
- AI を使ってもテストがブレにくい形に整える
まず全体像をつかもう 🗺️☁️
この章の主役は3人です 😄
- Worker … ふだんのアプリ本体
- Workers AI … 推論を実行するところ
- AI Gateway … そのAI呼び出しを観測・制御するところ
イメージはこんな感じです 👇
ブラウザ / React / Next.js
↓
Worker
↓
env.AI.run(...)
↓
Workers AI
↓
AI Gateway
(ログ / 分析 / キャッシュ /
レート制限 / リトライ / フォールバック)

Cloudflare の公式整理でも、Workers AI は Worker から binding で使え、AI Gateway は AI アプリの可視化と制御を担当します。AI Gateway では analytics・logging に加えて、caching、rate limiting、request retries、model fallback まで扱えます。 (Cloudflare Docs)
ローカル開発で超大事な注意点 ⚠️💸
ここはかなり大事です 📌 Cloudflare のローカル開発では、Worker のコード自体は手元で動きます。ただし binding は別で、Workers AI は ローカルシミュレーションなし / remote 接続あり の扱いです。つまり、AI 呼び出しは「ローカルで遊んでいるつもり」でも、実際には Cloudflare 側の AI を使っています。しかも公式ドキュメントでは、Wrangler のローカル実行中の推論でも usage charges が発生し、limits にもカウントされると明記されています。ここを知らずに連打すると、「あれ、ローカルなのに消費してる?」となりやすいです 😵💫 (Cloudflare Docs)

この章で作るミニ教材 🧪🤖
今回は、「仕様文からテストケースのたたき台を JSON で返す Worker」 を作ります 🌟
ポイントは、AI に自由作文させるのではなく、JSON Mode を使って返却形式をある程度固定することです。Workers AI は JSON Mode に対応していて、response_format に JSON Schema を渡せます。これを使うと、自然文よりずっとテストしやすい形に寄せられます。対応モデルの一覧も公式にあり、たとえば @cf/meta/llama-3.1-8b-instruct-fast や @cf/meta/llama-3.3-70b-instruct-fp8-fast などが載っています。 (Cloudflare Docs)

まずは Gateway を1つ作ろう 🚪📊
AI Gateway はダッシュボードからすぐ作れます。手順は Cloudflare dashboard → AI → AI Gateway → Create Gateway です。Gateway 名はあとで Worker から使うので、わかりやすい名前にしておくと楽です。AI Gateway は全プランで使え、現時点の core features として dashboard analytics・caching・rate limiting は無料提供です。試しやすいのがうれしいですね 🌈 (Cloudflare Docs)
実装してみよう ① wrangler.jsonc 🛠️
まずは AI binding を追加します。設定ファイルを変えたら、あとで npx wrangler types を実行して env の型を更新するのが公式の流れです。 (Cloudflare Docs)
{
"$schema": "node_modules/wrangler/config-schema.json",
"name": "chapter13-ai-helper",
"main": "src/index.ts",
"compatibility_date": "2026-04-15",
"ai": {
"binding": "AI"
}
}
実装してみよう ② src/index.ts ✍️🤖
下の例では、クエリ文字列で受け取った機能名をもとに、AI にテストケース案を JSON で作らせます。
デバッグしやすいように、返り値に aiGatewayLogId も含めています。AI Gateway を通して env.AI.run() する場合、公式の binding 例のように gateway.id を指定できます。さらに最新のログIDは env.AI.aiGatewayLogId で取れます。 (Cloudflare Docs)
export interface Env {
AI: Ai;
}
const responseSchema = {
type: "object",
properties: {
purpose: { type: "string" },
normalCases: {
type: "array",
items: { type: "string" }
},
edgeCases: {
type: "array",
items: { type: "string" }
},
invalidCases: {
type: "array",
items: { type: "string" }
}
},
required: ["purpose", "normalCases", "edgeCases", "invalidCases"]
};
export default {
async fetch(request: Request, env: Env): Promise<Response> {
const url = new URL(request.url);
const target =
url.searchParams.get("target") ?? "ログイン画面でメールアドレスとパスワードを入力する機能";
try {
const aiResult = await env.AI.run(
"@cf/meta/llama-3.1-8b-instruct-fast",
{
messages: [
{
role: "system",
content:
"あなたはソフトウェアテスト設計の補助AIです。日本語で返答し、必ずJSON Schemaに従ってください。"
},
{
role: "user",
content:
`次の対象について、テストケースのたたき台を作ってください: ${target}`
}
],
response_format: {
type: "json_schema",
json_schema: responseSchema
}
},
{
gateway: {
id: "chapter13-gateway",
skipCache: true
}
}
);
return Response.json({
ok: true,
target,
ai: aiResult,
aiGatewayLogId: env.AI.aiGatewayLogId ?? null
});
} catch (error) {
return Response.json(
{
ok: false,
message: error instanceof Error ? error.message : "Unknown AI error"
},
{ status: 500 }
);
}
}
} satisfies ExportedHandler<Env>;
ローカルで動かしてみよう ▶️🏠
実行はいつもの流れでOKです 😊
npx wrangler types
npx wrangler dev
そのあと、たとえば次にアクセスします。
http://localhost:8787/?target=会員登録フォーム
Cloudflare の公式チュートリアルでも、Workers AI を組み込んだ Worker は wrangler dev でローカル確認できます。ただしさっき触れた通り、Workers AI はローカルでも実アカウントへアクセスし、課金や制限の対象になります。この章では、何度も連打するより、まず数回だけ試して結果とログを見比べるのがおすすめです 👍 (Cloudflare Docs)
AI Gateway では何を見るの? 👀📈
AI Gateway をはさむと、Requests / Tokens / Costs / Errors / Cached Responses をダッシュボードで見られます。しかも個別ログでは、prompt、model response、provider、timestamp、status、token usage、cost、duration まで確認できます。 つまり第11章でやった「観測する力」を、AI 呼び出しにもそのまま広げられるわけです 🔭✨ (Cloudflare Docs)

ここでひとつ注意です ⚠️ AI Gateway のログには prompt や model response も載るので、本物の個人情報・秘密情報・生の本番データをそのまま流さない意識がとても大切です。ログが強力だからこそ、教材段階ではダミーデータ中心で進めるのが安全です。 (Cloudflare Docs)
さらに発展として、AI Gateway は OpenTelemetry 互換バックエンドへの trace export もサポートしています。大きい開発になると、ふつうのアプリ監視と AI リクエスト監視を並べて見られるのが強いです。 (Cloudflare Docs)
この章での「正しいテストの使い方」🧠✅
ここ、かなり大事です 🌱 AI を使うときは、AI の文章そのものを正解にしないほうが安全です。 おすすめは次の考え方です。
- 正解にするのは「文面」ではなく「JSON の形」
normalCasesが配列になっているかedgeCasesが最低1件あるか- 必須キーが欠けていないか
- 返ってきた案を人間がレビューして採用するか決める

Cloudflare の Workers テストでは、公式にも Vitest integration が推奨されています。なのでこの章では、「AI からの返答を完全一致で比べる」のではなく、Worker の振る舞い・JSON 形状・エラー処理 を Vitest で押さえるのが現実的です。AI は“答えを決める装置”より、たたき台生成機として使うほうが安定します 🙌 (Cloudflare Docs)
skipCache: true を付けた理由 🧼🔁
今回のサンプルでは gateway.skipCache: true を付けています。
これは、デバッグ中に「前の結果がキャッシュから返ってきてるのか、新しく推論したのか」が混ざると学習しづらいからです。AI Gateway のキャッシュは同一リクエストに対して有効で、text と image response で使えます。慣れてきたら skipCache を外して、キャッシュあり / なしで速度やコストの差を見る練習をするとかなり勉強になります 🚀 (Cloudflare Docs)
本日時点の最新トピックも押さえておこう 🆕✨
2026年4月15日時点で見ると、Workers AI のモデルカタログはかなり広がっていて、テキスト生成だけでなく embeddings・speech-to-text・vision・image 系も見えてきています。最近の追加例としては Gemma 4 26B A4B が 2026-04-04、Kimi K2.5 が 2026-03-19 に案内されています。 (Cloudflare Docs)
AI Gateway 側も進化が続いていて、2026-04-02 には upstream provider failure に対する gateway-level automatic retries が追加されました。設定では retry count は最大5回、delay と backoff 方式も選べます。つまり最近は、「アプリ側で全部がんばる」より、Gateway 側で resiliency を持たせる設計がしやすくなっています 💪☁️ (Cloudflare Docs)
発展ポイント 🌟
余裕があれば、次の発展もおすすめです 😄
- ログIDを保存して、あとで「この応答は良かった / 微妙だった」を手動で評価する
- retry を Gateway 側で入れて、失敗時の回復を観察する
- fallback / dynamic routing を使って、将来的に別モデルへ逃がせる設計を知る
- OpenAI-compatible endpoint もあるので、後で React / Next.js 側から既存のAI SDKっぽい書き方へ広げるイメージを持つ
Workers AI は AI Gateway 経由でも Workers binding 経由でも使えますし、OpenAI 互換の chat completions / embeddings エンドポイントもあります。AI Gateway の dynamic routing は、アプリコードを触らずにルーティング方針を変えやすいのが魅力です。 (Cloudflare Docs)
この章のまとめ 🏁🎉
この章で覚えてほしいことは、ひとことで言うとこれです ✨
AI は「本番でいきなり賢く使うもの」ではなく、まず「ローカルで観察しながら、安全に試すもの」 です。
Workers AI を使うと、Worker からかなり自然に AI を呼べます。AI Gateway をはさむと、その呼び出しを「見える・絞れる・守れる」ようになります。 そして学習段階では、AI を自由作文マシンとして扱うより、JSON で返すテスト補助役として使うほうが、ずっと実務に強いです 🌸 この感覚がつくと、第15章のミニ作品でも「AIをちょっと足す」がだいぶ現実的になります。 (Cloudflare Docs)
次は、この第13章に合わせて 「学習目標・演習課題・成果物・想定学習時間」付きの教材設計版 に落とし込むこともできます。